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映画評論 第三回
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「セレブレーション」(1998年)
トマス・ヴィンターベア監督
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余計な演出はやめて、生々しい真実を
絵画や小説と違い、映画は複数の人間による共同制作だ。では、絵画の画家、小説の小説家にあたる、映画作品の根本的な創造者って誰になるんだろうか?ストーリーの原作者?脚本家?カメラマン?役者?・・・実は、この質問に正しい答えはない。でも「それは監督だ」と答える人が多いと思う。このような「監督こそ映画における真の作家(AUTEUR)である」とする考えを「オトゥール理論」という。もともと1920年代には存在した見解だが、1950年代、ヨーロッパの評論家の間で激しく論じられて広まったものらしい。その後、この理論に基づき、個々の監督についての研究がさかんになり、ある特定の監督による作品をいくつか並べた時に見られる、表現の手法やテーマ上の共通点は、その監督の作家性を表す立派なものだと考えられるようになった。
一方、監督の独創性と個性的演出、つまり「味付け」の部分ばかりが重要視されるあまり、肝心の登場人物や場面設定そのものの描写力に乏しい作品が増えて来た(・・・というのは、別に私個人の意見ではないのだが、まあ、先を読んで下さい)。さらに、映画とは幻影であり、そのマジックを楽しむのが醍醐味だという考えが、近年のデジタル革命により、ますます強調されることとなった。今や、素人が自宅で画像処理出来る時代となり、写真や映像に記録されたイメージは本物であるという前提そのものが崩れてしまったからだ。本物であることに価値が見出されなくなった今、良く出来た偽物の方がより高く評価される。どれだけ真実に近付けるかではなく、どれだけ真実から離れられるかが問われる時代・・・。しかし、そもそも映画の醍醐味とは「リアルな臨場感」ではなかったか?遠い客席から鑑賞する舞台の劇とは違い、映画ではカメラのすぐ前に役者がいて、その微妙な表情まで全て見ることが出来る。幻影どころか、ゴマカシなしの写実性こそが映画の面白いところではなかったか?・・・
1995年、このような疑問を抱いたデンマークの映画監督達が「ドグマ95
」というグループを結成した。過剰に「作り過ぎ」の近年の映画の風潮に真っ向から立ち向かい、オトゥール主義なんてブルジョア根性のロマンティシズムだと足蹴にしたのだ。余計な演出は排除して、登場人物と場面設定による真実のみを追求しようと「純潔の誓い」なる10の掟
を定めた。この掟がまた非常に上手く出来ていて、これを守ろうとすると、安易な盛り上げ演出なんか全く出来ない仕組みになっている。私達が慣習的な映像表現にどれだけ囚われているかよくわかって面白い。例えば、緊張の場面で心臓がドックンドックンなんて音響効果や、クライマックスでガーンとテーマ曲なんてのもダメなんである。
前置きが長くなってしまったが、この「ドグマ95」による第1号がこの作品。田舎のお屋敷を舞台に、家長の60歳の誕生日パーティーが開かれる。親戚一同が集まった席で暴かれる、一家の惨い過去とは・・・?(ネタバレ防止のため、これ以上は書けません!)
パーティーの陽気な雰囲気(=演出)を打ち壊して、一家の秘密(=真実)を暴くという筋がドグマの信念に通じているのは単なる偶然だろうか。ドグマ作品第1号として実に最適だと思う。もちろん、ドグマがどうのなんて背景など抜きにしても、十二分に面白い映画だ。見終わった後グッタリしちゃうくらいの見応えかも。
ちなみに、ドグマのその後だが、創立者達の思惑通り、ドグマ作品は世界中で高い評価を受け、その根底に流れる信念はたくさんの映画制作者に支持されて、ついには「純潔の誓い」に沿った作品が世界各地で次々と作られるようになった。しかし、これだけたくさんの「自称ドグマ映画」が出て来た結果、「ジャンル映画禁止」と謳っていたドグマそのものが新たなジャンルになってしまうという何とも皮肉な展開となってしまった。それを主な理由に、2002年、ドグマの事務局は閉鎖された。事実上の解散である。しかし、このドグマ運動というのか、「ドグマ主義」、映画史に残る重要な動きであったことは間違いないだろう。
では次回へ・・・
NAOKO(2004.12.31)
セレブレーション (原題:Festen <英語題:The Celebration>)
ジャンル:ドラマ
監督:トマス・ヴィンターベア
出演:ウルリク・トムセン/ヘニング・モリツェン/トマス・ボー・ラーセン/パプリカ・ステーン/ビアテ・ノイマン /トリーネ・ディアホルム/ヘレ・ドレリス/テレーセ・グラーン/クラウス・ボンダム
製作:ビアギッテ・ハル
脚本:トマス・ヴィンターベア/モーウンス・ルコー
撮影:アンソニー・ダッド・マントル,D.F.F.
音楽:ラース・ボー・イェンセン
原案:トマス・ヴィンターベア
配給:ユーロスペース
1998年/デンマーク/1時間46分/35ミリ/カラー
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